2011年12月

GamBetで磁場の存在下での電子の軌跡がおかしい場合

GamBetで磁場を強くかけた条件の計算を行った場合に、電子が物質中や真空中で止まってしまったり、原子と相互作用することをやめて、直進してしまうことがあります。この場合ソフトの不具合ではなく、Gambet入力ファイル(.GIN)のPROCESSセクションのDsMaxに大きすぎる値を設定している可能性があります。

 
GamBetでは電子や陽電子の軌道を有限のステップDsに分割して、磁場や電場との相互作用を計算します。DsMaxはこのDsの最大値を指定します。強い磁場を印加した場合、電子は回転運動をしますが、この回転半径よりDsが大きくなると計算がうまく行かず不安定になってしまいます。従いましてエネルギーが最も低い電子/陽電子の回転半径よりもDsが小さくなるようDsMaxの値を調整して下さい。(値はDUnitで指定した単位)通常はデフォルトの値(DSMAXコマンド自体を入力ファイルに書かない場合)で大丈夫ですが、結果がおかしいと思われる場合はこの点について確認して下さい。デフォルトの値は、計算領域の対角線方向の長さを100等分した値です。
 
また電子が計算領域内で回転し続けて計算時間が長くなりすぎる場合は、EAbs(計算で考慮する電子の最小エネルギー)を出来るだけ大きく設定して下さい。
 
なお通常の設定では、このコマンドは光子には影響しません。

「Invalid setup」とエラー表示されプログラムが起動できない

プログラムランチャー(tc.exeやamaze.exe等)でプログラムのボタンをクリックすると「Invalid setup, configuration not detected」とエラーが出て起動できない場合、以下の点をチェックして下さい。

 
 
1. プログラムがディレクトリ(フォルダ)"c:\fieldp\TriComp(またAMaze, Xenos, Gambet)"にあるか?
 
2. "c:\fieldp"ディレクトリに"femanalyze.dll"が入っているか?
 
3. "c:\fieldp"ディレクトリに"hwd9984.dll"が入っているか?
 
4. ランチャーの"DATA FOLDER"の設定がCドライブ以外のディレクトリに設定されているか?
 
 
対処法:
 
1. "fieldp"フォルダがCドライブのルートディレクトリにない場合は、ルートディレクトリ(C:¥)に戻して下さい。
他のパソコンからディレクトリ毎コピーした場合は、コピー先のパソコンでアクティベーション(machine numberの生成から)が必要となります。
 
2. "femanalyze.dll"がない場合は、fpsetup_pro.exe/fpsetup_basic.exe(以降"fpsetup")を使って再アクティベーションが必要となります。メールでmachine numberをお知らせ頂いた後(machine numberはfpsetupのウィンドウに表示されています)、machine numberの生成からやり直して下さい。もしfpsetupでregistration codeの入力が出来ない場合は、アンインストールして再度インストールを行って下さい。
 
3. もし"hwd9984.dll"が足りない場合は最新版を上書きインストールしてください。アクティベーションは不要です。
 
4. 少し前のバージョンで、ランチャーの"DATA FOLDER"の設定がCドライブ以外のディレクトリに設定されている時にこのようなエラーが起きる場合がありましたので、最新版をインストールして同じ様にエラーが出るか確認して下さい。この場合は上書きインストールで、再アクティベーションは必要ございません。
 
 
取りあえずこれらのことを試し、改善されない場合はメールにてお問い合せ下さい。("femanalyze.dll"の問題以外は、アンインストールや再アクティベーションは、こちらからの指示があるまで行わないで下さい。)

EStat(静電界解析)における導電率と比誘電率

EStat(2次元静電界解析ソフト)の計算で、「同じ領域に導電率と比誘電率を同時に設定したいが、エラーが出てできない」というお問い合せをたまに頂きますので、そのことについて簡単に書きたいと思います。

EStatでは誘電(Dielectric)解析と導電(Conductive)解析の二つのモードがあり、誘電解析モードでは比誘電率(EPS)と電荷密度(RHO)のみ、導電解析モードでは導電率(SIGMA)のみを設定します。
これは、EStatは定常状態の電位や電流密度の分布を計算するソフトですので、0でない導電率(SIGMA)をもつ物質の場合は、誘電率は定常状態の電場の分布には影響を与えないので、SIGMAのみの設定で良いということです。
 
■ 誘電(Dielectric)解析:
この解析における物質とは、比誘電率εrと(空間電荷が存在するとき)空間電荷密度ρの値を異にする絶縁体(σ=0.0)の集まりです。
誘電解析は、完全な絶縁体からなる系、または短いパルス電圧が良絶縁体にかかる場合に該当します。
 
■ 導電(Conductive)解析:
物質は電気伝導率σ>0.0を持つ導体です。静電的極限においては、比誘電率εrは電場の分布に影響を与えることなく、空間電荷密度はρ=0.0 です。
電気めっき装置は導電解析の例となります。

真空アークプラズマ薄膜作製装置の計算

最近複数のメーカー様から真空アークプラズマによる薄膜作製装置の計算が可能かというお問い合せを頂きました。その際の回答を参考のため、ここにも書いておきたいと思います。

計算の目的や装置のパラメータにもよりますが、真空アークプラズマでの薄膜作製装置の計算というのは複雑で、完全にはシミュレートすることはできず、ある程度仮定に基づいた近似的な計算になります。弊社で扱っております荷電粒子軌道解析ソフトOmniTrak(3次元解析)Trak(2次元解析)は、基本的に真空中のイオン/電子が電場・磁場によりどのような軌道を描くかを計算するソフトですので、中性粒子やプラズマ自体をシミュレートする機能がないためです。
 
従いまして、中性粒子との衝突、電子との再結合などの影響は基本的に考慮できません。またイオン軌道付近に存在する電子による空間電荷や電流の中和については、中和の度合いをユーザー側で指定して計算することになります。Trakではこの機能がコマンドとしてありますが、OmniTrakではユーザー側で誘電率や磁場の値を大きくする等して近似することになります。
(詳細はTrakマニュアル11.5章をご参照下さい。Trakマニュアル:http://www.fieldp.com/manuals/trak.pdf )
 
この中和モデルによる計算は仮定に基づいておりますので、実験の結果と比べながら、この計算モデルが妥当か、またそうであれば妥当なパラメーターはどの程度かを見極めていく必要があります。
 
なお、イオンの種類に関しましては、複数の種類のイオンを設定することが可能で、イオン種毎のエネルギー分布を計算することも可能です。イオン放出は放出面を設定して、その面上から指定したエネルギーを持つイオンを放出させる形になります。
 
このような計算の実績についてですが、こうした装置の計算に利用されているお客様はおられるようです。ただ残念ながら、詳細はお知らせ頂いていないので、ちょっと分かりません。それから、弊社では今のところ薄膜作製装置の受諾解析の実績はございませんが、米国の開発元ではTrakを用いて行ったことがあります。その際は上記の空間電荷の中和を、空間の誘電率を高くすることで模擬しておりました。また私個人は以前他社の3Dのソフトを使って計算したことがあります。その際は中和の効果は無視して計算するという条件でした。

計算が不安定になり途中で終わってしまう場合や、精度が上がらない場合の対処法

HiPhiMagnumなどの解析プログラムで、計算が不安定になり途中で終わってしまったり、なかなか精度が上がらず解が収束しない(Relative residulalが小さくならない)、あるいは計算結果の精度が悪いといった場合の対処法を良く聞かれます。以下に原因と対処法を述べます。

 
なお、条件にもよりますが、正確な計算にはrelative residualは1.0E-6以下、出来れば1.0E-7以下が望ましいとされております。
 
 
(1) メッシュの切り方が良くない場合
 
計算がうまく行かない原因はほとんどの場合、メッシュの切り方が良くないのが原因です。
その場合、要素サイズの変化が大きすぎる場合やねじれた要素がある場合が殆どです。
メッシュを作るときに気をつけることは、隣りあった要素サイズの違いがあまり大きくならないように(メッシュ間隔の差をなるべく2倍程度以下に)することと、要素の形状ができるだけ細長くならない様にすることです。TriCompでは正三角形、AMazeでは立方体に近い要素形状が理想的です。
 
ねじれた(distorted)要素や反転した(inverted)要素がある場合は、MeshMetaMeshのメッシュ生成時の画面や.MLSファイルにdistortd element(inverted element)があるというメッセージが表示されますので、distortd elements: 0と表示されるようにメッシュを修正する必要があります。
 
メッシュ間隔の変化が急すぎる場合は、メッシュ間隔を段階的に変えて、変化を緩やかにさせる必要があります。
またメッシュが細かすぎても精度が悪化する場合があります。初心者の方で細かければ細かい程精度が良くなると考えて、非常に細かいメッシュにされる方が多いのですが、細部の構造を無理なく表現できる程度の細かさで十分です。あまり細かいと誤差が積もり、返って精度が悪くなることもあります。
 
 
(2) 境界条件が不適切な場合
 
Neumann境界が直角に交わっている場合など、本来は物理的にあり得ない条件では精度が悪くなりがちです。不自然な境界条件の設定になっていないかチェックしてみて下さい。
 
 
(3) 計算精度が低いまま計算が打ち切られている場合
 
メッシュが適切でも精度が悪い場合は、計算精度が低いまま計算が打ち切られている可能性があります。ログファイル(HiPhiでは.HLSファイルなど、拡張子が"*LS"のファイル)をテキストエディタで開いて、最後の方に"Achived targed residual"と書かれおらず、"Reached maximum number of cycles"(ソフトのバージョンによって少し文言が違うかもしれません)と書かれている場合、精度が目標(ResTargetで指定した残差)に達しておりません。その場合はインプットファイル(".*IN"ファイル)のMaxCycleの値を大きくして計算し直して下さい。
 
 
(4) OMEGAの値
 
相対残差(relative residual)がなかなか小さくならない場合、OMEGAの値を変更することで解が収束する事で改善することがあります。OMEGAは0.0から2.0までの値で、値が大きいと速く収束し、小さいと計算が安定します。(デフォルトでは1.98程度) 計算が十分に収束しない場合はこの値を小さくしてみて下さい。書式としましては、"OMEGA 1.8" のような行をRestarget行の下あたりに挿入します。
 
 
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